CASE:住宅ローン(離婚)

家も住宅ローンも夫名義ですが、離婚しても今の家に住みたいと思っています。気をつけることはありますか?

相談事例:妻45歳・パート(夫48歳・会社員、子ども2人)
15年前に住宅ローンを組んで新築した家に暮らしています。住宅ローンは、あと10年残っています。家も住宅ローンも夫名義ですが、離婚しても今の家に住みたいと思っています。住宅ローンを連帯債務で負っている場合、離婚にあたって気をつけることはありますか?

回答
一般的には、家の名義人が住宅ローンの名義人となり、住宅ローンを支払うことになります。そのため離婚後も現在の家に住み続けるには、家と住宅ローンの名義を夫から妻に変更する必要があります。

離婚後も住宅ローンつきの家に住み続けるには

財産分与について

婚姻中に夫婦で築き上げた財産は、名義にかかわらず離婚に際して2分の1ずつ清算(分与)します。これを「財産分与」といいます。貯金や保険の解約返戻金、不動産などプラスの財産だけでなく、住宅ローンをはじめとする借金などのマイナスの財産も対象となります。

夫婦の財産すべての価値を合計してプラスになる場合、夫婦それぞれが保有する財産を多く保有する方が少ない方に、差額の2分の1を分与します。

住宅ローンがオーバーローンの場合など、夫婦の財産すべての価値を合計してもマイナスになる場合、財産分与は認められず、夫婦それぞれの名義の財産をそのまま保有することが一般的です。この場合でも、夫婦の話し合いにより、オーバーローンとなっている住宅ローンつきの家を取得することは可能です。

離婚後の財産分与については以下の記事も参考にお読みください。

住宅ローンについて

住宅ローンは、財産分与の対象となるマイナスの財産です。住宅ローンの残っている家を取得したい場合は、住宅ローンを負担する必要があります。

住宅ローンを組む際、夫婦どちらか一方の単独名義、夫婦の共有名義(夫婦が連帯債務を負う状態)、または夫婦のどちらか一方が債務者(借主)でもう一方が保証人、いずれかのケースが多いと思います。この場合、家の名義はローンの名義と一致することが通常です。

住宅ローンも家も夫の単独名義の場合、妻がその家を取得するには、住宅ローンを組んでいる金融機関の同意を得て、借り換えをする必要があります。その際、金融機関による審査が行われます。

一般的には借り換えが必要

離婚後も住宅ローンの残っている家に住み続けたい場合は、家を取得することになりますが、その際は上述のとおり、借り換えなどをして住宅ローンも負担することになります。

借り換えせず家賃を払って住み続けるリスク

借り換えの審査が通らなかった場合などには、家を取得して住むことが難しくなります。夫婦の話し合いにより、名義の変更をせず、現在の名義人である夫が住宅ローンを払い続けるなかで、妻がその家に住み続けることも可能です。

ただし、離婚したあとは他人となるため、妻は夫に家賃を払う必要があります。家賃は住宅ローン相当額で、これに固定資産税相当額が加算される場合もあります。

離婚したいと思うほど夫婦関係に問題が発生したにもかかわらず、大家と店子という新たな関係性が生じること、夫が住宅ローンを支払わなくなった場合、妻が家を明け渡さなければならなくなるリスクがあることなどから、夫が住宅ローンを払い続ける家に妻が住み続けることは、あまりお勧めできません。

連帯債務者となっている場合の注意点

連帯債務(保証人)から抜けた方が良い

不動産を取得しない場合にも、離婚の際には連帯債務や保証に注意が必要です。

夫婦双方の収入を考慮して住宅ローンを組むにあたり、夫婦が連帯してローンを負担することになったり、夫婦の一方が借主となり、他方が保証人となったりすることも少なくありません。

たとえば、夫婦が連帯債務者となっている住宅ローンが残っている家から妻が出ていき、離婚後は夫がそのまま家に住み続ける場合、一般的には夫が住宅ローンを支払い続けることになります。

妻が連帯債務者のままですと、夫が住宅ローンを支払えなくなった場合、妻は家に住んでいないのに住宅ローンを支払わなければならなくなります。1回だけならまだしも、立て替えが続いたり、その立て替え分を夫が支払わない可能性も残ります。

このようなことを避けるためには、離婚の際に、住宅ローンを夫の単独名義にしてもらう必要があります。それが難しい場合には、負担を最小限にするために家の売却を検討する必要があります。

 


離婚時に住宅ローンの残っている家がある場合、夫婦間で話し合ってきちんと取り決めをしないと思わぬトラブルが生じかねません。


 

離婚後の財産分与
トラブルにならないために。

住宅ローンはさまざまな事項を検討する必要があります。住宅ローンも含めた財産分与は、お早めにご相談ください。

※無料法律相談が受けられる民事法律扶助制度もあります