CASE:財産分与(熟年離婚)

離婚すると夫婦で貯めた貯金や保険や退職金はどうなるの?

相談事例:妻48歳・パート勤務(夫50歳・会社員、子ども2人)
離婚したいと考えていますが、経済的なことが心配です。夫婦で貯めた貯金や保険や退職金は、離婚するとどうなるのでしょうか。

回答
婚姻中に夫婦で築き上げた財産は「財産分与」といって、原則として婚姻中築いた財産の2分の1を受け取ることができます。

財産分与とは

財産分与とは、婚姻中に夫婦で築き上げた財産を分配することです。民法上では、夫婦の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる(民法768条1項)と定められています。

財産分与の対象となる財産

婚姻中に夫婦の協力によって築き上げた財産(共有財産)が対象となります。夫婦どちらの名義になっているかは関係ありません。婚姻後に購入した不動産、自動車、有価証券、保険解約返戻金、退職金など、夫婦が協力して取得した財産といえるものは、すべて財産分与の対象となります。

逆に、婚姻前から持っていた財産(たとえば婚姻前からの定期預金)や、婚姻中であっても夫婦の協力とは関係なく取得した財産(たとえば婚姻中に相続で得た財産)は、財産分与の対象にはなりません(特有財産)。

財産分与の対象となる財産は、原則として「別居時」を基準に確定します。つまり離婚前であっても別居後に取得した財産は、原則として財産分与の対象となりません。

財産分与の割合

財産分与は、財産の形成や維持に貢献した割合によって決まりますが、2分の1とすることが一般的です。妻が専業主婦であっても、夫が収入を得て、妻が家庭を支えることで夫婦の財産が形成されるのですから、原則として2分の1とされます。

いろいろな財産について

退職金

退職金は「給与の後払い」という性質があるため、給与と同じく財産分与の対象となります。まだ退職金を受け取っていない場合も、就業規則(賃金規定)などに支給の規定があれば、財産分与の対象とします。具体的な金額は、財産分与の基準時(別居時)に退職した場合に支給される退職金のうち、婚姻期間に相当する部分となります。

保険(学資保険・生命保険・年金保険など)

婚姻期間中に保険料を支払っているものは財産分与の対象となります。具体的な金額は、財産分与の基準時(別居時)の解約返戻金を保険会社に算出してもらいます。ただし、婚姻前から保険に加入している場合、財産分与の対象となるのは、婚姻期間に相当する部分だけとなります。学資保険などは、離婚後も加入し続けることが多いため、名義を変更することもあります。

具体的な財産分与の例

[夫名義の財産]

預貯金:200万円  退職金見込額:300万円  自動車:50万円  生命保険の解約返戻金:50万円  教育ローン:-100万円
→ 500万円(200万円+300万円+50万円+50万円-100万円)


[妻名義の財産]

預貯金:50万円  株式:50万円
→ 100万円(50万円+50万円)

夫婦共有財産の総額:600万円
各自が取得する金額:300万円(600万円×1/2)
夫が妻へ渡す金額 :200万円(妻が受け取る金額:300万円-現在妻が有している金額:100万円)

詳しくは、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

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